ジェネリックの製造販売が加速する理由

政府は医療費の抑制に繋げて行くため2020年後半までに新薬よりも安価なジェネリックこと後発医薬品の普及率80パーセントを達成するという目標を掲げており、現在よりさらに先発医薬品よりもジェネリック使用拡大の推進が加速すると考えられています。

当初の目標では2017年半ばに普及率70パーセント以上の達成を掲げていたもののわずかに及ばず、それでも2年ほどで10ポイント近く伸びたこともあって2020年後半までの普及率80パーセント達成は実現するとみられ、各製薬メーカーもジェネリック医薬品シェア拡大に取り組んでいるという現状です。

その一方で新薬を生み出す体制が弱体化することへの懸念が高まりつつあって元々リスクが大きいとされて来た創薬こと新薬開発への姿勢が改めて問われる事態になって来ました。

無かった薬の開発が始められ新薬として世に出るまでにはおよそ9年から17年ほどかかるとされ、それまでの間に300億円から500億円もの費用が必要になると言われている上開発の成功率は約3万分の1とまで言われるほどで薬となるべき候補としてみられていた物質も多くの場合、研究開発の途上で断念されてしまいます。

近年はかつて以上に研究開発にかかる年月が長期に及ぶ傾向があり、基礎研究がなされ非臨床試験を経て臨床試験に至るまで10年以上かかるのは当然という中、先発薬で効果と安全性が実証されているジェネリックの製造販売が加速するのは当然とも言えるものです。

新薬ができるまでの流れ

そういった現状でありながらも未だに原因が解明されていない病気も含め多くの新薬が望まれていることもあり、創薬への期待がかつて以上に高まっていることから創薬を生み出しやすい環境を整えることが叫ばれることになりました。

創薬にはまず2年から3年かけられる基礎研究の段階があり植物や鉱物あるいは動物などの天然素材から抽出する物質や、化学合成やバイオテクノロジー等の活用によって生み出された物質など薬の候補となる化合物をつくってそれが有効な薬となるかどうかの可能性を調べる研究がなされます。

近年ではゲノム情報の活用も進められており、対象となる新たな物質の性状や化学構造を調べてスクリーニング試験を実施し取捨選択して行く過程も含めて基礎固めをして行く段階です。

基礎研究の後さらに3年から5年を費やして実施されるのが非臨床試験で、薬になる可能性のある新規物質を対象にして動物や細胞などを利用して薬効や毒性の有無が調べられて行き、物質が体内で吸収され分布し代謝や排せつがどういった過程でなされるかの体内動態に関する試験もなされ、非臨床試験の実施と共に品質や安定性に関する試験も行われます。

非臨床試験によって有効性が実証されて来てもそれが人にとって有効であるかどうかや何よりも安全性の面で問題が無いかどうかを徹底的に調べる必要があり、3年から7年かかると言われる臨床試験の実施に入ります。

治験薬と呼ばれる非臨床試験を通過した薬の候補が人に対しても安全で効果が確かかどうかを見極めるための治験は3段階に分けて行われ、病院等の医療機関において健康な人や患者を対象にして同意を得た上で試験が繰り返されてデータ収集し、薬としての可否が判断されるという過程です。

新たな薬として世に出る前の最終段階には1年から2年かかるとされる承認申請と審査があり、臨床試験によって薬としての有効性だけでなく確かな安全性と品質について証明された後に厚生労働省からの承認を得るための申請が行われ、学識経験者といった人々で構成される薬事・食品衛生審議会などの審査を受けて通ったのちに薬価基準に収載されて、いよいよ新薬として製造発売することが可能になります。

新薬には莫大な費用と長い年月がかかる

その間にかかる莫大な費用と長い年月は一製薬メーカーだけで担うにはあまりにもリスクが大きなものとなっており、新たな薬が生み出せる体制を支える社会経済的な創薬インフラの再整備が重視されるようになって来ました。

現在医療現場で使われている薬の多くは約50年ほどの間に生み出されて来たものと言われ、欧米での開発が多いものの我が国も多くの有効かつ安全な治療薬を生み出し手術をしなくて済む治療を実現させ入院期間を短くすることにも貢献してきました。

今後も我が国の医療分野におけるイノベーションは世界中からも期待されており、創薬のみならず科学や化学の分野での新技術の開発や応用が21世紀の重要産業と考えられています。

創薬インフラを整えて来た国の一つとして世界の医療を支える理念の大切さが改めて問われるようになっており、長期的観点からの我が国の医療のみならず経済財政問題も含めて早急な体制の見直しが求められている状態です。

比較的容易に製造販売が叶いすぐに利益に結びつくジェネリックの普及に関しての影響も見据えながら、製薬会社での研究開発の基盤を整備し日本が誇る優秀な研究者や産業技術といった財産を生かして、さらなる進歩向上を図ることが求められています。